私は介護の仕事を10年以上しています。
着替えの手伝いも、入浴介助も、足浴も、仕事として何百回とやってきました。だから母の介護が始まったとき、正直こう思っていたんです。
「私はプロなんだから、大丈夫」って。
……結果から言いますね。3日で嫌になりました。
イライラして、きつい言い方をして、母を黙らせてしまって。「プロなのに、実の母親相手だと全然ダメじゃん」って、自分にがっかりしました。
もし今、親の介護が始まったばかりで「イライラしてしまう自分はダメだ」って責めている方がいたら、今日の話はきっと「私だけじゃないんだ」って思ってもらえると思います。
親の介護が始まって1週間…イライラしてばかりの自分が嫌になります。介護のプロなら、こんなふうにならないんですよね…?
それがですね…プロでも3日で嫌になったんです(笑)今日は私の情けない話、聞いてください。
母が圧迫骨折。「私が支えなきゃ」と張り切っていた
母が圧迫骨折と診断された直後は、とにかく安静にというのが先生の指示でした。
買い物も、掃除も、当たり前にできていたことが一気にできなくなる。実家には父もいますが、高齢ながらまだ仕事をしているので日中はいません。近くに住んでいる私が通って、身の回りのことを手伝うことになりました。
母の圧迫骨折の経緯や、診断された日のことは、こちらの記事に詳しく書いています。
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買い物ひとつでも、けっこう大変なんですよね。
電話で母に買ってきてほしいものを聞いて、スーパーで「これ食べるかな」「日持ちするかな」って悩みながら選んで、重たい荷物をリュックに詰めて運ぶ。
買い物だけでこんなに大変なんだ、と思いながらスーパーに通っていました。正直、心の中では「こんなことが続くなら、そのうち宅配でも頼んでほしいな」と思っていたくらいです。
それでもこのとき私、けっこう張り切っていたんですよね。
「介護のことなら、私が一番よくわかってる」
仕事でやってきたことを、今度は母にしてあげられる。そんな気持ちすらありました。
「寝たきりじゃないんだから」——良かれと思った提案、ぜんぶ断られました
母が安静にしていた、いちばん初めの頃の話です。あれもこれもバタバタしていた、通い始めて3日ほどの間のことでした。
私はこの3日で、良かれと思ったことを次々に断られました。順番に書きますね。
温かいタオルも、足浴も「自分でできる」
お風呂に入れないだろうから、着替えを手伝おうか。温かいタオルで顔を拭いてあげようか。足浴もできるよ。
仕事でやっていることだから、声をかけるのは自然な流れでした。でも母の返事はこうです。
「自分でできる。寝たきりじゃねーんだから」
……はい、うちの母、もともと口が悪いんです(笑)今に始まったことじゃなくて、昔からこうなんです。
だから深い意味はないってわかってはいるんですけど、こっちも余裕がないときに言われると、地味にくるんですよね。
実際、母は自分でレンジでタオルを温めて、顔を拭いていました。
お風呂のシミュレーションまでしたのに
入浴介助は仕事でやっているので、「一人では入れないだろう」と思った私は、実家のお風呂場でどうやったら安全に入れるかシミュレーションまでしました。
「一度シャワーだけでも浴びたほうがいいよ。私がやってあげるから」
そう張り切って言ったものの、母はなんとなく乗り気じゃない。結局、母の入浴を手伝うことは一度もありませんでした。
せっかく持って行った電気ポットも
やかんに水を入れて持ち上げるのは、今の母には重くて危ない。そう思った私は、自分の家で使っていた電気ポットを持って行きました。お湯を入れてスイッチを押せば沸く、あれです。
「これなら楽だから使いなよ」
「やかんに少し水を入れて、使う分だけ沸かすからいい」
――せっかく持ってきたのに。
そのときの私は、正直ムッとしていました。でも今思えば、母には母の気持ちがあったんですよね。
母はたぶん、「自分はまだまだ大丈夫」と思っていたんです。自分が歳だと認めたくない。娘に年寄り扱いされたくない。骨折はしたけど、それとこれとは別、というか。
それに、娘に申し訳ないという気持ちも確かにあったんだと思います。実際、介護が始まったばかりの頃、母の口から「悪いと思ってる」と言われたことがありましたから。
ただ当時の私は、そんなふうには考えられませんでした。
温かいタオル、お風呂、電気ポット。3日ほどの間に、3つとも断られたんです。
良かれと思ってやることが全部空振りして、私はどんどんイライラを溜めていきました。
掃除機がけで、ついに言ってしまった
部屋の掃除ができていないから、私が一生懸命掃除機をかけていたときのことです。母から強い口調で言われました。
「そんなにやらなくていい」
私も気持ちに余裕がなかったんでしょうね。つい、言い返してしまいました。
「せっかく来てやってるんだから、そんな言い方されたくないんだけど」
その日は母の整形外科の定期受診の日でした。母は私に強く言われたことを気にしたのか、その後、黙って一人で受診に出かけていきました。
その背中を見て、なんとも言えない気持ちになったのを覚えています。
薬局で待っていた、あの時間
一度、母の状態をちゃんと把握しようと、受診に付き添って先生の話を一緒に聞きに行ったことがあります。
診察が終わって、薬局で処方薬を待っていたときのこと。
母は処方された日数に何か不明な点があったようで、薬剤師さんに一生懸命聞いていました。薬剤師さんが「先生に確認します」となって、けっこう長いやりとりになって。
その場面をそばで見ていた私は、イライラしてしまったんです。
「お薬のことなんて、診察のときに先生に聞けばいいのに」
そして思ってしまいました。もう一緒に受診について行くのは疲れる、と。
「介護のことは、よろしくね」——悪気のない一言に、心がざわついた
その受診の日は、身内も一緒に来てくれました。車を出してくれて、通院だけは今も手伝ってもらっています。
帰り道のことです。ふと、こう言われました。
「介護のことは、よろしくね」
私が介護の仕事をしていると知っているから、出た言葉なんだと思います。悪気があって言ったわけではないと思うんです。
でも、実際に母の介護が始まっていた私は、心の中で思わずこう返していました。
「そんなに簡単に、言うなよ」
正直に言うと、私はこう言ってほしかったんです。「何かあったら手伝うよ」「何かあったら言ってね」——お世辞でもいいから、そんな一言が。
ほしかったのは、実際の手伝いというより、「ひとりに任せてないよ」という気持ちだったのかもしれません。
周りから見れば、「娘がやるのが当たり前」なのかもしれません。ましてや介護の仕事をしているなら、なおさらそう見えるんでしょう。
でも、そんな綺麗事じゃないんです。やってみないとわからないことが、本当に多いんです。
そして、正直に白状すると……私自身も、軽く見ていた側でした。
仕事では、ご家族が介護を手伝っている場面をたくさん見てきました。でもその大変さを、どこかで「そういうものだよね」と流していた気がします。
子供が親の介護をするって、こんなに大変なことだったんだ。母の介護が始まって、身をもって知りました。
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私は私で、余裕がなかった
言い訳をさせてもらうと……この時期、私は介護福祉士の試験を目前に控えていました。
「私、あなたのことをやってる場合じゃないんだけど」
「試験が控えてること、わかってるよね」
心の中では、けっこう冷たいことを思っていました。私には私のやることがあるんだけど、って。
お昼の時間になって「お昼どうする?」と聞いても、母は「自分でやる」と言い出す。
もう気持ちが滅入ってしまって、私は自分の分だけお昼を用意して、さっさと食べて、自分の家に帰って試験勉強に取り組みました。
イライラがピークに来ていて、このまま同じ部屋にいると私がしんどい。だから家に帰って、距離をあける。それが精一杯の選択でした。
気持ちだけじゃなく、体にも出ていた
実はこの頃、体にも出ていたんです。試験の2週間ほど前から、介護の疲れが出たのか、食欲がなくなってしまって。
ちょうど、試験会場の下見に行った日のことです。会場を確認したあと、休憩がてらファミレスでお昼にしました。あまり食欲がなかったので、シンプルなスパゲッティを注文したんですが——
それすらも、全部食べられませんでした。少し食べただけで、胃が受け付けない。結局、ドリンクバーのお茶くらいしか口にできませんでした。
「これからの母の介護、先が思いやられるな…」。ファミレスの席でそんなことを考えて、なんだかしんどかったのを覚えています。
幸い、試験までには回復できて、当日は万全の体調で臨むことができました。それは本当に良かったんですが、介護のストレスって、気持ちだけじゃなく体にも出るんだと、身をもって知った出来事でした。
他人だから、介護の仕事はできるんです
前から思っていたことがあります。
私が介護の仕事を10年以上続けてこられたのは、相手が「他人」だからなんです。
他人のことは、これまでどう生きてきたかを知りません。どんな人生を歩んで、どんな性格で、昔どんなことを言う人だったのか。何も知らないからこそ、割り切って、プロとして接することができる。
でも親は、全然違います。
親子には、これまでの歴史があるんです。育てられ方、言われてきた言葉、何十年分の積み重ね。だから母の何気ない一言にも、その何十年分がくっついてきて、感情的になってしまう。
それに、考えてみてほしいんです。
仕事なら私、こんな声かけをするんですよ。
・「こんにちは、体調はいかがですか?」
・「これからお食事にしますね」
・「トイレ行きましょうか?」
実の母に、そんな声かけしませんよね(笑)
つまり、プロの介護って「他人としての距離感」の上に成り立っているんです。親相手には、その距離感が最初からない。だから技術があっても、資格があっても、親の介護は別ものなんです。
介護される側も、同じかもしれない
そして、これは介護される側も同じなんだと思います。母が私の手伝いを断ったのも、「娘に世話されたくない」気持ちがあったから。
もしかしたら母も、他人のプロが相手なら、素直に「お願いします」と言えるのかもしれません。外の力を借りるのがうまくいくのは、きっとそういう理屈なんですよね。
これは、本格的に介護が始まってからも同じだと思います。家族の言うことは聞いてくれなくても、ケアマネージャーさんのような第三者から言ってもらうと、すんなり伝わることがよくあるんです。
家族同士だと、お互い言いたい放題ですからね(笑)
無理に家族が説得するより、第三者に説明してもらったほうがスムーズに進むことは、本当に多いです。「言っても聞いてくれない」と悩んだら、間に人を入れることも考えてみてくださいね。
母親にイライラしてしまう気持ちのことは、介護が始まる前にも書いたことがあります。「私だけじゃない」と思えるだけで、少しラクになりますよ。
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「何かあったら電話して」——あえて行かない、と決めました
さきほど書いたとおり、実家には父がいます。母の介護が始まっても、朝から晩まで仕事に出かけていました。娘としては「少しは休めばいいのに」と思っていましたけどね(笑)
とはいえ父も父で高齢なので、あまり無理はさせたくなくて。それでも仕事に行く流れで、ゴミ出しや簡単な掃除はやってくれていたようです。
それでも、夜には父が帰ってくる。まるっきりの一人暮らしではありません。
だから母にこう言いました。「何かあったら電話して」
何もなければ、自分から電話したり、気になって毎日実家に行ったりするのはやめよう。何かあれば母から電話が来るんだから、それでいいじゃないか——そう割り切ることにしたんです。
手を出す代わりに、週刊誌を置いてきた
とはいえ、放ったらかしにしたわけじゃありません。
当時の母は「安静に」と言われて、家で動けない状態。「いつまでもこんな状態じゃ、うつになる」と、何度も愚痴っぽく私に言ってきました。
正直、聞いているのもつらかったです。でも同時に、ずっと家にこもって、自分のこれからのことしか見えなくなっているんだな、とも思ったんです。
それで私は本屋に行って、週刊誌を何冊か買って母に渡しました。週刊誌なんて読むの、久しぶりだったんじゃないかな。
手を出す代わりに、退屈をまぎらわせるものをそっと置いてくる。それが私なりの距離感でした。
ちなみにその後、母は宅配弁当も頼み始めました。「外の力を借りる」の実際は、こちらの記事に書いています。
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あの3日が教えてくれたこと——頼まれていないことは、あえてやらない
介護の仕事を10年以上やってきて、母の介護はたった3日で嫌になった。
この経験から改めて思ったのは、親の介護は本当に難しいということです。イライラするし、伝わらないし、良かれと思ったことがことごとく空回りする。
たぶん私は「こうしてあげたい」という気持ちが強すぎたんです。仕事でやっているから、先回りして、やってあげなきゃって。
でも母が求めていたのは、そこじゃなかった。
だから今は、こう思っています。
頼まれていないことは、あえてやらない。
先回りしない。自分でできることは、自分でやってもらう。
それって結局、仕事で他人にしている「ちょうどいい距離感」を、親との間にも意識して作るということなのかもしれません。
放っておくことは冷たいことじゃなくて、お互いが苦しくならないための、一番の優しさなんだと思います。
この「距離感」の気づきは、介護が始まって3ヶ月のときにも書いています。あの頃より、少しだけ言葉にできるようになりました。
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プロでも3日で嫌になるって聞いて、なんだか肩の力が抜けました。イライラする私が特別ダメなわけじゃなかったんですね。
そうですよ。イライラは、それだけ真剣に向き合っている証拠です。頑張りすぎず、外の力も借りながらいきましょうね😊
まとめ|プロでも3日で嫌になる。だからあなたも大丈夫
・介護の仕事を10年以上していても、実の母の介護は3日で嫌になった
・良かれと思った先回りは、ことごとく断られた(タオル・お風呂・電気ポット)
・他人だから割り切れる。親子には何十年分の歴史があるから感情的になる
・頼まれていないことは、あえてやらない。それが距離感を保つ優しさ
・手を出す代わりに「気にかけている」を渡す方法もある(うちは週刊誌でした)
・自分が良い状態でないと、介護はできない。最初から頑張りすぎない
親の介護が始まったばかりで、イライラして、自分を責めているあなたへ。
大丈夫です。介護のプロだって、実の親は3日で嫌になるんですから(笑)
あなたのイライラは、冷たさじゃなくて、真剣さの裏返しです。全部やってあげようとしなくていい。あなたが倒れないことが、いちばん大事ですからね。
「私がやらなきゃ」と一生懸命になるほど、知らないうちに自分を犠牲にしてしまいます。
だから、最初から力を入れすぎない。あえて距離を取って、自分の時間もちゃんと守る。自分が良い状態じゃないと、介護はできないんですから。
そんな私も、あれから7ヶ月。母とは今、「ちょうどいい距離」で、ぼちぼちやれています(笑)
3日で嫌になっても、大丈夫。イライラしても、大丈夫。完璧じゃなくていいから、あなたとあなたの親御さんの「ちょうどいい距離」を、ゆっくり見つけていってくださいね。
私も、同じ道の途中です。一緒にゆるゆるやっていきましょう🌸
╲ 頑張りすぎてるあなたへ ╱
買う前に質問だけでも大丈夫
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